前回に続けて、企画展「南部家のたしなみ-詠む・描く・書く-」の3章と4章のおすすめの作品をご紹介します。
3章 描かれた画題
南部家の人々は、「布袋」・「鐘馗」・「大黒天」など特定の画題を多く描いています。なぜその画題が描かれたのか、またそこに込められた思いや願いを読み解いています。
おすすめ作品 南部利正筆「大黒天図」(岩手県立図書館蔵)
この作品は、小さな作品なので展示室ではなかなか目立ちませんが、10 代盛岡藩主南部利正らしさが表れているように思います。利正が大黒天の下絵は描き、それを摺物にしたもので、署名は筆書きされています。右手に打出の小槌、左手に大きな袋を持った大黒天が米俵に座っています。その周りに描かれている5つの丸いものは宝珠です。利正は、俳諧をよくし、いくつか歳旦帳(年頭に歳旦・歳暮の句を集めて出版したもの)を刊行しています。そこには、宝珠がよく描かれていますし、また利正が描いた挿絵の雅号「玉集」にも宝珠の絵が見られます(玉=宝珠(宝のたま)、集=□に篆書の集)。かなりな宝珠好きですね。
4章 習いの成長
南部家の人々記した書を幼少から壮年まで辿ることで、1人の人間としての成長を窺うことができます。併せて、我が子の成長を願う姿が垣間見える資料も紹介しています。
おすすめ作品 南部利義筆「松竹故年心」(岩手県立博物館蔵)
4章は、特に南部家の人々の人間味が垣間見える展示となっていますので、親しみを感じる部分だと思います。この作品が意外と好きです。これは、14 代盛岡藩主南部利義が12 歳の時に書いたもので、現在の10、11歳に当たるでしょうか。字は少し整わないところもあるけれど、のびのびと書かれ小5男子感に溢れています。ほかの作品だと年齢と書かれた絵や文字にギャップがありすぎるものもありますが、この背伸びしない等身大な感じが好きです。でもしっかり落款が押してあるところは、さすが南部家のお子様ですね。
「南部家のたしなみ」というと何だか堅苦しい感じがしますが、難しく考えずに気になる作品を見つけて、「上手だな」、「かわいい」と気軽に楽しんで見ていただければと思います。ご紹介しきれなかった作品がまだまだたくさんありますので、ぜひご来館ください。
担当学芸員:小原祐子