「週刊鍾馗」第4号では、花巻人形の「鍾馗」&商家「糸治(糸屋)」(旧中村家)の「鍾馗」をご紹介します。

花巻人形は京都の伏見人形や仙台の堤人形の流れを汲むとされる土人形の一種で、江戸時代中期、一説には享保年間(1716~1736)から盛岡藩・花巻で制作されてきたと伝えられています。その種類は数千種以上にも及ぶとか。
こちらの鍾馗は目にも鮮やかな藍衣をまとい、鋭い眼光に吊り上がった眉、そして立派な髭が見事に表現されています。花巻人形は穏やかで優しい顔立ちをしている人形が多い印象ですが、こちらは鍾馗の伝説に基づいてか何とも勇ましいお姿!前に広げられた左手は、悪鬼・疫病はこれ以上通さないといっているかのようです。

 

つづいて、こちらは商家「糸治」(旧中村家)の五月飾りの一つである鍾馗の幟です。

天明2年(1782)に盛岡で創業した中村家は、呉服・古着を中心に取り扱った城下でも屈指の豪商です。屋号を「糸治(いとじ)」または「糸屋(いとや)」と呼び、天保6年(1835)から藩の庇護を受け、紫根染を一手に扱うなど、呉服商として着実な成長を遂げました。
端午の節句には武者人形をはじめ、武者絵や家紋を染めた幟、小型の槍や纏なども飾っていたそうです。

こちらの鍾馗は全て朱で描かれ、なんとも厳めしい、味わい深い顔つきです。

個人的に端についている重しのさるぼぼが愛らしくて素敵!

※旧新穀町にあった中村家住宅は、昭和46年(1971)に国重要文化財に指定され、現在は盛岡市中央公民館(愛宕町)の敷地内に移築・復原されています。

 

「週刊鍾馗」は今号をもって休刊となります。

いつかまたお会いしましょう!

 

担当学芸員:小西治子