企画展「殿さまのギフト」、終了まであと19日となってしまいました。

相変わらず歴文館日誌の更新が遅くて申し訳ございません。今回は第Ⅲ章「大名たちの付き合い」から、南部家と交流が深い大名家をご紹介します。

時は天正18年(1590)、豊臣秀吉に領地を安堵され、豊臣政権の一大名として認められた初代盛岡藩主 南部信直!ですが、そこに至るまでには前田利家や浅野長政(長吉)など有力な大名たちとの関係を築くこと不可欠でした。前田家、浅野家とはそれ以降も深い繋がりを持ち続けます。

 

<加賀百万石・金沢藩 前田家>

こちらの手紙は前田利家が南部信直に宛てた手紙です。天正15年(1587)に利家と起請文を交わし、豊臣政権への接近を確実なものとした信直に対し、「御家中にも叛逆の族」がいることへの心配や、翌年までには「出羽・奥州両国の御仕置」が実施されることの予告など、興味深い内容が記されています。また、追伸には前田の領知である加賀は豊臣秀吉の本拠地である京都から程遠いので、より近い若狭に領地を持つ浅野長政と「御入魂」、親しくすることを勧めています。実際、これ以降、浅野家と南部家の関係は深まっていきます。

「南部信直宛前田利家書状」天正17年(1589)8月20日

 

時代は変わり5代盛岡藩主 南部行信の時に、老中 阿部正武から「南部家と前田家はどうして仲が良いの?教えて?」的な質問を受けます。当時の江戸幕府の幕閣からも不思議に思われるほど親密な関係だったのでしょう。

その質問に対し、行信は曾祖父にあたる南部信直と前田利家の親交から始まり、利家に嫡子 利直の指導を頼み、いよいよ親身になってくれたこと、利直の「利」の字は利家からもらった字であることなどを回答しています。

「前田家へ懇意次第書上」元禄15年(1702)2月1日

 

このように親密な関係にあった南部家と前田家ですが、その後、一時交流がない状態になります。そこで改めて前田家との関係性を復活させようと動いたのが、(個人的推し殿)8代盛岡藩主 南部利視です。また、この時に南部家の依頼で両家と姻戚関係にある鳥取藩 池田家が仲立ちをしてくれています。※ここでは詳しく述べませんが、企画展では池田家との関係についても、婚礼調度品と共にご紹介しています。

利視は「利」の字を使用することを改めて前田家に願い出ており、元文3年(1738)に正式に許可を得た上で「信視」から「利視」へと改名しています。南部家にとって「利」の字は前田家から拝領した大切なもの、「贈り物」であり、これ以降も歴代の藩主たちは名前に「利」の字を用いており、前田家との繋がりを常に意識していた様子がうかがえます。

「南部氏歴代画像」より8代盛岡藩主 南部利視 ※企画展では初代 光行の場面を展開しています。

 

さぁ、改めて盛岡藩主の名前を見ていきましょう。

初代 信直、2代 利直、3代 重直、4代 重信、5代 行信、6代 信恩、7代 利幹、8代 利視、9代 利雄、10代 利正、11代 利敬、12代 利用、13代 利済、14代 利義、15代 利剛、16代 利恭

楽しく覚えられるよう、どなたか「盛岡藩主数え歌」の作詞作曲をお持ちしております。

利視の代に前田家との関係性が見直されたからでしょうか。9代盛岡藩主 南部利雄は前田家から正室を迎えています。そして、・・・長くなりすぎましたので、続きは企画展にて。

 

<広島藩 浅野家>

前田家の部分でも触れましたが、浅野家との縁は前田利家が南部信直に、浅野長政(長吉)と「御入魂」となり「御頼」することを勧めたことから始まると伝えられています。浅野長政は豊臣秀吉の側近であり、秀吉の正室おね(北政所)とは義理の姉弟にあたり、豊臣政権で生き抜いていくためにも浅野家との関係を深めていくことは非常に重要だったのでしょう。

掲載画像は浅野長政の息子である幸長が、2代盛岡藩主 南部利直に宛てた手紙です。約170㎝に及ぶ手紙で、徳川政権に時代が移り変わろうとしている繊細なこの時期に、利直の動向を気遣っている内容が書かれています。だいぶ脚色が入りますが「徳川様から茶入「道阿弥肩衝」を拝領したそうですね、めでたい(^∀^)」「南部の領国でたくさん金が採れたそうですね、めでたい(^∀^)」などなど、幸長は我が事のように喜んでおり、だいぶ親しい関係であったことがうかがえます。

「南部利直宛浅野幸長書状」慶長15年(1610)11月27日

 

婚姻関係としては、11代盛岡藩主 南部利敬と16代盛岡藩主 南部利恭が浅野家から正室を迎えており、安土桃山時代・江戸時代・明治時代を通じて浅野家と南部家は繋がりを持ち続けました。

笹椿模様蒔絵双六盤/江戸時代後期

11代盛岡藩主 利敬に嫁いだ浅野家 教姫の婚礼調度品のひとつ。浅野家の家紋である「違鷹羽」が各所に散らされています。

 

企画展では、他にも黒田家、水戸徳川家、池田家など南部家と婚姻関係を結んだ大名家の資料を展示しています。

この家とも繋がりがあったの!?と驚かれる声も多く寄せられています。「贈り物」を通して大名家、殿さまたちの関係・結びつきを、ぜひご覧ください。

 

担当学芸員:小西治子