歴文館日誌を御覧の皆さま、大変です。
1月が、終わりました。
1月が終わったということは、あと10日もすると企画展「器百様」も終わってしまうということです。
これは大変。早く皆さまに観ていただかねばなりません。

そんなわけで本日は、終わりかけの企画展「器百様」の根幹を成す、第2章「容の器」の展示資料をちょこっとだけご紹介します。

 

展示の様子としては、例えばこんな感じです。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2章「容の器」は、「容器」つまり入れ物としての「器」をとり上げています。
容器といえば、誰もが思い浮かべる「器」の中の「器」です。
まさにKing of 器と言えましょう。

そのKing of 器を、ここではいくつかのコーナーに分けてご紹介しています。
まず「植物の器」では、漆器をはじめとした植物由来の素材で作られた器を紹介しています。
が、漆器を作るためにはまずは漆を確保する必要がありますので、
このコーナーではいきなり漆の採取に関わる文字資料をご覧いただいております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それがこちら。
「毛馬内直次宛南部利直書状(けまないなおつぐ・あて・なんぶとしなお・しょじょう」という資料です。

2代盛岡藩南部利直から家臣の・毛馬内直次(三左衛門)に当てた大変に長い長い長~い書状(手紙)で、当時進められていた盛岡城の築城についての情報源として取り上げられることの多い資料ですが、今回ご覧いただいているのは築城に関わる指示とは異なる内容の部分です。(とはいえ、築城とまったく関係がないかどうかも不明)

写真の赤い▼で示した範囲には、漆の採取に関わる指示が記されています。
ざっくりまとめますと、
 ①漆の採取のシーズンが来たので担当者に指示して漆掻き職人たちを現地に向かわせなさい。
 ②例年、漆の木に深く傷をつけすぎているようだから気を付けなさい。
 ③木が弱ると漆の実が成らなくなってしまうかもしれないから本当に気を付けなさい。
 ④採取量が予定より少なくなるとしても、それでもいいから木を大切にしなさい。
 ⑤前にも言ったはずだけど、わかってない奴がいるみたいだからちゃんと伝えなさい。
 ⑥漆の木が枯れたりするのは、担当者の不祥事になるんだから。
という感じの内容です。

盛岡藩でいかに漆の木が大切されていたか、伝わる書状です。
そしてなんとなく、利直という藩主の人となりもちょっとわかるような気がする文面ではないでしょうか。
このように大切にされた漆を用いて作られた漆器が、現在でも浄法寺や安代などで制作される漆器に結び付いていくわけです。

 

続いてご覧いただきますのがこちら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2つ目のコーナー「やきものの器」でご紹介中の、カエルがかわいい「瓢箪形袋杯(ひょうたん・がた・ふくろさかずき)」です。
「袋杯」というのは、杯に「袋」とよばれる別の容器をくっ付けてあるもの。ただ外側に貼り付けるだけの飾りではなく、袋の内部空間は杯とつながっているのです。この資料の場合は、瓢箪の葉っぱにあごを乗せて一休み中のカエルちゃんのお腹の下に隠すように穴が開いています。この穴が瓢箪とつながっているのです。

そうするとどんな良いことがあるかといいますと、こうしておくことで、通常の杯の容量に加えて瓢箪の容量分のお酒を一度に注ぐことができるのです!
資料にお酒を注ぐわけにはいきませんので推定ですが、見た感じですと瓢箪が付いたことで2倍くらいの容量になっている気がします。

のん兵衛の味方、それが袋杯です。

ちなみに、「そんなにいっぱい飲めないからいらない」という方もご安心ください。
瓢箪の口にある穴をふさぐことで空気の流出を防げば、お酒が瓢箪に流れ込むのを防ぐことができるのです。
その場合、瓢箪はただの大き目な飾りになります。

 

「やきものの器」コーナーでは、ほかにも県内(一部県外)各地で生産されてきた色々な器をご覧いただけます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

細工はありませんが、現在も久慈市で生産されている「小久慈焼」もステキです。
シンプルで何も余計なものがない造形と、白と茶の色合いは現代の暮らしにも充分マッチしそうです。

「やきものの器」の中でひときわお客様からの支持を集めているのがこちらの「鬼面杯」。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな杯ですが、「鬼」の顔を模した形がユニークです。
凹凸があって不安定に見得ますが、額の2本の角と、若干しゃくったあごの3点でしっかりと置くことができます。
鏡ごしに見える見込み(内側)にはおちょぼ口の「お福(お多福)」が描かれます。
もうすぐやってくる節分には、こんな杯で一杯飲めたらなんだか縁起が良さそうです。

 

続いては「金属の器」のコーナーでご覧いただける「南部鉄器」をご紹介。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらに並んでいるのは江戸時代~大正時代頃の南部鉄器。いずれ劣らぬ重厚感です。
ここでは、その中から1点ご紹介しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1枚目写真の下段右端の資料です。
七福神でおなじみの恵比寿と大黒が描かれています。上方には仕入帳や大福帳がぶら下がっていることから、どうやら商家の様子を描いているようです。

この資料を、ちょっと頑張って横からのぞくと、こんな様子が描かれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長裃を身に付けた武士が、枡を片手に大変な勢いで豆まいているではありませんか。
そう、こちらの資料も先ほどの「節分杯」に続いて節分がらみのモチーフです。

実はここから更に後ろに回り込むと、逃げ惑う鬼が描かれているのですが、展示方法の関係で今回はご覧いただけません。しかしせっかくなので、この歴文館日誌をご覧いただいている皆さまにだけ、こっそり裏側をご紹介しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

節分の図も良いですし、古い資料には古いものにしない魅力がありますが、古いものばかりが良いものというわけではありません。

今回の企画展では、出来たてほやほやの新しい南部鉄器もご紹介しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

去る10月に当館で開催された「南部鉄器青年展」への出品作の中から、悩みに悩んでお借りした6点です。

こちらの鉄瓶「あかき」は、柿をモチーフにした作品です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄に描かれている(厳密には描いているのは砂でできた型にですが)とは思えないほど、繊細で美しいタッチの柿。
なだらかに広がる富士型のフォルムも優美です。

 

来館者アンケート「UtsuONEグランプリ」において、南部鉄器の中で一番の人気を集めているのがこちらの作品。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注ぎ口以外のほぼすべてのパーツが「六角形」で構成された銚子。
すっきりしたフォルムの細部にまでこだわりが詰まった、小さいながらも目を引く作品です。
蓋の部分には「沈金」という漆芸技法を用いているのも独創的です。

 

「容の器」最後のコーナーは「あの人の器」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手前の部分では、盛岡の先人たちが愛用した様々な道具=器をご紹介しています。
原敬記念館さんからお借りした平民宰相・原敬のでっかいカップとか、先人記念館さんからお借りした、『岩手県史』の編纂を行った社会経済学者・森嘉兵衛のメガネ(視力補正具)とか、「あの人」が手にした色々な器をご覧いただけるコーナーになっています。

このあたりのコーナーに差し掛かると、お客様からの「こじつけじゃない?」「いや、これを器と呼ぶのは…」というお声が良く聞こえるようになりますが、気にしません。

こちらのコーナーの最大の推しは、奥の壁面にかかる掛軸です。
原敬の発案で編纂された、歴代南部家当主の事績を記した『南部史要』に見る、「殿さまの器」をご紹介しています。
取上げたのは、9代藩主・南部利雄、11代藩主・南部利敬、13代藩主・南部利済の3人の藩主。
『南部史要』の記述の中から、3人の藩主の「人柄」を物語るエピソードを抜粋・意訳したものを資料解説の代わりに掲示しています。
藩主の器を「大きい」と感じるか「小さい」と感じるかは読んだ人次第。ぜひ感想をお聞かせください。

 

小さな杯からきっと大きい「殿さまの器」まで、ありとあらゆる器をご覧いただける企画展「器百様」は今月11日までの開催です。
ご興味をお持ちの方は急いでご来館くださいませ。