日々の最高気温が0℃を下回ることにも慣れてきた今日この頃。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

このあいだはじまったばかりだと思っていた企画展「器百様」の会期も、いつも間にか残すところあと1ヶ月を切ってしまいました。はじまった展示はいつか終わるのが世の習いではありますが、何度経験しても寂しいものです。
この寂しさを癒すのは、満員御礼状態の展示室の風景だけです。

さて、今回の「企画展の窓から」では、予告通り展示室での遊び方をご紹介したいと思います。

「博物館は勉強する場所」と固く信じている真面目な方もいらっしゃることと思いますし、博物館での勉強がお嫌いでなければそれもまた正しい博物館の楽しみ方です。
しかしながら、「なんで休みの日にまで勉強しに行かにゃならんのですか」とお考えの方はもっとたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方にとって博物館はつまらない息苦しい場所で、「社会科見学で連れて行かれた時には一刻も早く外に出てお弁当を食べることばかりを考えてたなぁ…」という苦い思い出しかない場所なのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなトラウマを抱えた方がこのブログを見てくださっているかどうかは甚だ疑問、というか多分いないだろうとは知りつつ、今日はそんな「博物館嫌い」な皆さまに向けて、今回の企画展で勉強せずに遊びまくる方法をお伝えいたします。

 

【展示室での約束】

「なんだよ早速ルールでがんじがらめかよ」と、お思いになった方、すみません。
一応ね?最低限のルール的な物がありましてね?校則だとでも思ってください。
ルールの中で最大限に遊びまくることこそ、大人のたしなみとしての遊びだと思います。

その① 走らない
 ⇒ふつうに危ないからです。狭い上に薄暗いことが多いので、走ると危険です。

その② 騒がない
 ⇒おしゃべり自体は禁止ではありません。
  うるさくしなければガンガンに感想を言い合って楽しんでください。

その③ つまんないって言わない
 ⇒博物館の人が傷つくからです。
  あなたの隣で何食わぬ顔をしているその人が、
  実は様子を見に来た担当学芸員だったりすることもあります。
  つまらないのは仕方ないですが、館を出てから言いましょう。

基本ルールはこんなところです。
あとは常識の範囲内で、誰の中にもある「友達の家でやってはいけないこと一覧」を参考にしましょう。
それでは早速、遊び方です。

 

【お気に入りを見つけよう】

博物館・美術館の最大の楽しみと言えなんですか?
「嫌いなんだからそんなもんある訳ねぇだろ」なんて言わずにちょっと考えてみてください。
歴史系博物館は嫌いでも、美術館や鉄道博物館、動物園や水族館(実は博物館の一種)だったらどうでしょう?

考えたことがなくてもきっと皆さん自然にやっています。それが「お気に入り探し」です。
動物園からの帰り際にご家族と「どれが一番好きだった?」「ライオン!」「僕はパンダ!」という会話をした覚えはないでしょうか?あるいは休日に友達と美術館に行って「あ、この絵だったら玄関に飾りたい。」「え?マジ?怖くない?こっちの方が良い。こっちをトイレに飾りたい」と小声で話した経験はありませんか?

きっとそれが一番シンプルな、博物館の遊び方です。

今回の企画展では、より積極的に遊んでもらうために「UtsuONEグランプリ」を開催中です。
「うつわんぐらんぷり」と読みます。どうですか?ダサイですか?

こちらが遊び方です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平たく言えば、展示資料の人気投票です。
難しいことは置いておいて、資料に添えてある解説なんか読む必要はありません。
「この表現は***の影響を感じさせる…なんと見事な…」などという感想も不要です。
心の赴くまま「わー綺麗」「素敵」「かっこいい!」「うけるw」と感じたその資料があなたのお気に入り。
軽い気持ちで一票を投じてみてくださいませ。途中経過のランキングが展示室の前に掲示されているので、それを見て気になった資料を探してみるのも良いかもしれません。

 

【触って感じる】

普通の博物館の展示品の多くは、触ってはいけません。指紋が付いたり汚れたりすると資料に良くないですし、何よりもしも触ってうっかり壊してしまうと、今までの「博物館嫌い」なんて目じゃないくらい深い心の傷を負いかねません。ですから、仮に触れそうでも、決して触らないことをお勧めします。

ところが、今回の企画展には「触っていい物が入っている謎の箱」が3つ置いてあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな箱です。
こちらが遊び場、「さわって当てよう!中の器はなんだろな?」のコーナーです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この箱の両側には穴が開いています。
ここから手を入れて、中に入っている何らかの「器」の正体を当てる遊びです。よくテレビで見るアレです。
中に入っているのはすべて、本企画展における「器」の定義に当てはまるもので、かつ私たちの暮らしの中にふつうにあるものばかりですが、触った印象と普段見ている姿は意外と結びつかないもので、苦戦する人も思いのほか多いご様子です。

念のためお伝えしますが、中身が取り出せても持ち帰ってはいけません。
無くなった場合はこの寒空の下、担当学芸員が泣きながら買い物に行くことになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何となく中身が想像できてきたら、そっと扉を開けて中身を確認。扉の裏側にはその「器」の説明文も書いてあります。
中身は不定期に入れ替わるので、もしも何度も足を運んでいただけたなら、もう一度手を突っ込んでみてください。
同じだったらごめんなさい。

なお、念のためお伝えしますが、そんなに大層な物は入っていません。
あと、生き物とかヌルヌルした物とかも入っていないのでご安心ください。

 

【隠れキャプションを探せ!】

「キャプション」というものをご存知ですか?本や雑誌に掲載された写真や絵の下の方にちっちゃい字で記された説明文のことです。博物館的には、資料の情報や解説文を掲載した小さいパネルのことをキャプションと呼んでいます。

普通のキャプションがこちら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このように、資料の傍らに置いてあります。資料が小さいのでキャプションがバカでかく見えますが、小さいのが普通です。

今回の企画展会場では、ガラスケースに納まったいわゆる「展示資料」以外の、展示室内の備品の一部にもこっそりとキャプションを添えてあります。
特に名称はありませんが、便宜上「隠れキャプション」と呼ぶことにしましょう。「隠れキリシタン」よりは「隠れミッ○ー」に近い存在かと思います。全部で4ヶ所に隠れています。

発見しても特典はありませんが、今までのところ全部発見したという報告はいただいていないので、もし「4つ見つけました」とご報告をいただければ、「凄いですね」とお答えする予定です。

 

どうでしょう?少しは展示室で遊べそうな感じがしてきたでしょうか?
もしそんな気がしてきたならば、今週末はぜひもりおか歴史文化館で、博物館苦手克服に挑戦してみてください。
もちろん、もともと博物館大好きな皆さまも、1度ならず2度3度とご来館いただければ幸いです。

企画展「器百様 ―土器と鉄器と食器と武器と―」は2月11日(月・祝)までの開催です。
皆さまのご来館をお待ちしております。

 

担当学芸員:福島茜