企画展最終日の前日に失礼いたします。

今回の企画展の窓からは雪や氷を味方につけ、楽しむ盛岡の人々の姿をご紹介します。

例年、盛岡では11月に初雪が降り、12月ごろに断続的に降り始めた雪は3月下旬ごろまでとけることはなく、4月上旬まで降雪がある・・・。こうみると体感的に1年のうち約5ヶ月は冬の世界に包まれていることになります。

そのような寒い時期は暖かい部屋でぬくぬくと・・・、いいえ、盛岡の人々は冬だからこそ楽しめる遊び・スポーツに大人も子ども夢中になりました。昭和30年代ごろまでは車より馬橇(ばそり)が運搬・移動手段の主力で、下駄スケートを履いた子どもたちが馬橇の後ろにつかまり遊び場から遊び場へと移動していく様子がよく見られたそうです。凧揚げや羽根突きはもちろん、手作りのソリを片手に子ども達は元気に町中を駆け回りました。

                                        イラスト:菅森幸一氏

企画展示室では、当時の子どもたちが使った竹スキーや下駄スケート&靴スケート、手作りのソリなどを展示しています。特に下駄スケートは「履いていた!」「懐かしい」とのお声をよくいただきます。

下駄スケートは、その名の通り下駄に刃(ブレード)を取り付けたもので、靴スケート(軍艦スケート)や現在主流の革製のスケート靴が登場するまで全国で使われていました。特に道路が凍りやすい盛岡では下駄スケートが大人気!刃に溝が無く、横滑りしてしまうので上手く滑るにはコツがいるそうですが、子ども達は下駄スケートを履いてあちこち遊びに出掛けたそうです。

女児用の下駄スケート

男性用の下駄スケート、内側に滑り止めの金具付き(岩手県立博物館所蔵)

展示資料の中で個人的に心打たれたのはこちらのソリです。底に下駄スケートが取り付けられているのがお分かりになりますでしょうか。「誰よりも速くっ!」と速さを追い求める子どもの情熱が伝わってくるかのようです。良く見ると上部は赤色、下部は青色に塗られており、カラーリングにもこだわりが感じられます。

ソリ(下町史料館所蔵)

他にも岩手公園(盛岡城跡公園)で凧揚げやソリ遊びなどで楽しむ子ども達の写真を多数展示しています。公園内は小学校でテリトリーがあった、人気のソリ滑りのコースは梅林だったなどなど・・・。昭和ごろの懐かしのエピソードがありましたら、ぜひスタッフに聞かせてください。

 

ソリ滑り(撮影:佐々木清八/昭和46年)

 

スキー場やスケート場も大賑わい!現在は全面氷結しなくなってしまいましたが、高松の池は冬季国体の会場に選ばれるなど、盛岡を代表するスケートリンクのひとつでした。また、昭和39年(1964)には県内初の室内スケートリンク「盛岡レジャーセンター」(*夏は温水プール)が完成し、連日多くの人で賑わいました。同センターでは当時メジャーではなかったカーリングをいち早く独自のルールで行うなど、積極的に冬の遊び・スポーツに力を注いでいたようです。

高松の池で開催されたアイスホッケーの試合の様子(撮影:佐々木清八/昭和39年)

かつて高松の池が全面結氷し、冬季スポーツのメッカとして親しまれていた様子が垣間見えます。しかし、選手の皆さん、かなり軽装な出で立ちです。

盛岡レジャーセンター(画像提供:藤原養蜂場)

 

今回の企画展の副題としました「寒さと戦う・冬を楽しむ」、良くも悪くも私たちの暮らしに大きな影響を与える雪・氷の存在。冬という季節と共に歩む北国岩手、盛岡の人々の姿をご覧ください。

 

担当学芸員:小西治子