まだ夏のはずだと自分に言い聞かせる毎日でしたが、なんと盛岡の秋祭りがはじまってしまいそうです。
なんなら盛岡八幡宮の例大祭そのものは今日からはじまっています。
非常に残念ですが、この町の夏はすでに終わり、秋を迎えたことを認めざるを得ないようです。

さて、夏真っ盛りの7月下旬からはじまった企画展「ANIMALs×morioka 資料のなかの動物たち」の会期も早くも折り返しを過ぎ、残すところ1か月ほどとなりました。
既にご覧いただいた皆さま、ありがとうございます。また来てください。
まだご覧いただいていない皆さま、寒くて出かけたくなくなる前にぜひお越しください。

企画展の見どころを偏った姿勢でお知らせしてきましたこの「企画展の窓から」も、4回目の今回で一区切り(でも5回目もあるかも)。最終章にあたる第4章「ANIMALsに願いを込めて」の内容をご紹介してみたいと思います。この章でご覧いただくのは、人々の願いや祈りを込められた動物たちの姿です。ツルやカメが縁起の良いモチーフとされるのは皆さまご存知かと思いますが、これも長寿の「願い」を込められた動物の一例です。登竜門(中国の黄河上流にあるという激流)を登り切ると龍になる、といわれる鯉も縁起が良いとされます。そこで立身出世、転じて子どもの健やかな成長という「祈り」を込めたのが鯉のぼりというわけです。

 

そんな第4章から、まずご紹介したいのがこちら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はんこです。もうすこし堅い表現にすると「家紋印」です。
南部家の家紋としてもっとも有名な「双舞鶴(そうぶかく)」または「向鶴(むかいづる)」または「双鶴紋(そうかくもん)」と呼ばれ紋章が彫り込まれています。なかなかに細かくて、これを彫れと言われたらちょっとお断りしたい感じの家紋ですね。
南部家はなぜ、このような紋章を家紋にさだめたのでしょうか?もっと描きやすい方がみんな幸せなはずなのに…
そこにはこんな逸話が隠されているのです。

説①
 今を去る事900年ちょっと前、鎌倉時代のこと。南部家の初代にあたる南部光行は、将軍・源頼朝に従って信州浅間山へ狩りに行きました。光行は近くの池に飛んできた2羽のツルを殺さずに射ち落とし、頼朝にたいそう褒められました。これを記念して2羽のツルを家紋にしたんだとさ。どんとはれ。

説②
 今を去る事600年ちょっと前、室町時代のこと。根城南部の10代目・光経は秋田の安東氏との戦の先陣にいました。ある日の明け方光経は、2羽のツルが飛んできて9つの星が空から降ってくるという夢を見ます。その後、見事戦に勝利をおさめることができたので、これを記念して胸に九曜の星をつけた2羽のツルを家紋にしたんだとさ。どんとはれ。

ということで、ただの家紋と侮るなかれ。感謝と祈りを込めた縁起の良い家紋なのです。
展示室ではこの家紋印のほかに、家紋を大きくあしらった文箱もご覧いただけますのでじっくりどうぞ。

 

続きましてこちら。

招きネコです。黒々とした闇そのものみたいな目が怖いですが、なかなかの美猫ですね。
招きネコは、招く手によって呼び寄せる「福」が異なると言われています。よく見かけるのは右手で「財運」を招いているものですが、こちらのネコは左手で「人」または「人の縁」の縁を招くといわれるものです。
さらに特徴的なのが、右手(前足)の下です。何かしらを踏みつけていますね。はじめは岩かと思いましたが、目があるので生き物のようです。じゃあネズミかと思いましたが、何となくヌルっと長い体なのでこれも違うらしく…。最終的に、どうやらナマズらしいぞというところで落ち着きました。

ナマズを踏んだり、押さえつけたりという形は、招きネコに限らず様々な人形にあるものなのだそうです。というのも、近世以前の日本で「ナマズ」と言えば「地震の原因の巨大ナマズ」を指したものだから。これを押さえつけるということは、すなわち「地震を防ぐ」ことを意味しているわけです。地震大国日本にとって、これほどありがたいお守りはありません。

 

最後にご紹介するのはこちら。

鐔です。刀のツバ。
写真が良くないですね。まったく模様が見えませんが、どちらも「葡萄に栗鼠」というモチーフ。
右側は絡み合ったブドウのツルと葉、そして実をベースにした透かし鐔で、3匹のリスが思い思いの姿勢でブドウのツルにつかまっています。全体が赤茶の錆色になっていますが、ブドウの実のところには鍍金がほどこされており、良いアクセントになっています。左側は、フラットな鐔の表面を一周するようにブドウのツルが伸びており、その上を1匹のリスがつたい歩いている様子。繊細かつかわいいモチーフですね。
しかし、武器である刀の鐔にあしらわれた模様が、かわいいだけなはずがないとは思いませんか?そうです。かわいいだけではない、きちんとした理由があるのです。

 「葡萄に栗鼠」
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 「ぶどうにりす」
  ↓
 「ぶどうにりっす」
  ↓
 「武道に律す」

「武道に律す」は「武道(武士としての道)に真剣に取り組む」という意味です。それが「ぶどうにりす」と通じる音なので、武士たちに大変好まれたモチーフなのです。

「オヤジギャグじゃん」って思いました?
私も思いました。みんな思うと思います。
日本人は昔からオヤジギャグ(ダジャレ=駄洒落)が大好きな民族です。おせち料理はその集大成と言えるでしょう。
日本人の心、渾身のオヤジギャグの詰まった鐔もぜひ展示室でご覧ください。

 

人びとの祈り、願い、そして日本人の心(=オヤジギャグ)を込められた動物をご覧いただける企画展「ANIMALs×morioka 資料のなかの動物たち」は10月9日までご覧いただけます。
寒くなる前にぜひお立ち寄りくださいませ。