去る5月18日、夜のもりおか歴史文化館において老若男女が集う催しが開催されました。

閉館後の博物館で、夜な夜な人を集める…
そんな怪しげな催しと言えばそう!「ナイトミュージアム」です!

 

もりおか歴史文化館でも以前から、夏休み期間に合わせて”子供向けの”ナイトミュージアムは実施しておりました。しかし、今年度からはじまった「れきぶんナイトミュージアム」は、夏休みの子供たちだけでなく、

「日曜のイベント…?講座ぁ?…行けるわけないじゃぁありませんか。仕事ですよ、仕事…」

というステキ大人の皆さまに、「仕事帰りにちょっと一杯」の前に挟むワンクッションとして、「仕事帰りにちょっと歴文」を味わっていただくべく、土日に休んでない大人が、土日に休めない大人のために企画した、
まさに

”大人の、大人による、大人のための「オトナのナイトミュージアム」”

なのです!!!!(※でも夏はお子さま向けのもやります)

 

その第1回目を開催しましたのが5月18日だったわけです。そのタイトルはズバリ!

れきぶんナイトミュージアム・春
『今日は国際博物館の日!「資料保存のイロハのイ ~博物館の”ウラの顔”お見せします~」』
!!!!

長いですね。タイトルだけでもう飽きてしまうほどに。次回はもっとがんばります。

今回のナイトミュージアム、初回にも関わらず「資料保存」などというマニアック極まりないテーマを選んだのには実は理由があります。
「国際博物館の日」を、皆さまはご存知でしょうか?「国際博物館会議(ICOM)」という、フランスはパリに本部を置き、世界中の名だたる博物館とその専門家が属する組織があります(続きはwebで!→ https://www.j-muse.or.jp/icom/ja/)。このICOMが1977年に制定した「博物館が社会に果たす役割をもっと知ってもらおう!」という記念日が5月18日なのです。毎年この日は世界共通のテーマを掲げて、各館が趣向を凝らしたイベントを開催しています。
今年のテーマは「歴史と向き合う博物館~博物館が語るものは~」

博物館が語ることができること、語るべきことは数多いですが、今回はナイトミュージアムとしてわざわざ夜にお集まりいただくということを加味して、「夜の博物館でなければ見られないもの」を見ていただこうというのが主旨でした。
映画「ナイトミュージアム」では資料がワサワサ動き出して大変なことになるわけですが、当館の主役を張っている南部家関連資料は大変おとなしく、夜になっても特に動きません。そこで、学芸員が資料を動かすところ、つまり「展示替え作業」を見てもらおうじゃないか!ということになったのです。

 

さて、前置きが長くなりましたが当日の様子をざっとご紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは導入部として、1時間弱の座学。「資料保存のイロハのイ」というタイトルにのっとって、資料保存の基礎的な内容をお話ししました。好きでもないのに聞かされていたならば、この時点でもうウンザリするタイプのお話しかと思いますが、さすがは自らの意思でご来館くださった大人の皆さま。最後まで熱心に聞いてくださいました。感謝の極みであります。

今回お話ししたのは
イ、資料はなぜ「劣化」する?
ロ、“オモテの顔”と“ウラの顔”~「展示」と「保存」のバランス~
ハ、資料保存の“七つ道具”~もりおか歴史文化館の場合~
ニ、「常設展示室」の資料が「常」に「設」置されてはいない件

の、4点でしたが、この夜のハイライトは4点目。
「常設展示室」というのは実は展示内容が変わることがあるんですよ、ということを感じていただくべく、展示替え作業を見ていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いつもどおり)薄暗い展示室を抜けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場にたどり着きました。

この日の作業は、酉年を祝って展示していた鳥を描いた掛軸を撤去し、新たに屏風を展示するというもの。
ケースの外にひとり、(見えませんが)中にひとりの学芸員がいて、大声で「真ん中もう少し開いてー、あ、開き過ぎ。閉じて―。OKそのまま前に、ちょこっとだけ出して!あと2㎝!OK!」と声をかけて資料の位置を調整していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作業中の床には、綿の入ったマットを敷いて作品に優しい環境をつくります。展示が終わった資料は「薄葉」と呼ばれる薄ーい紙を使って丁寧に包んで収納し、収蔵庫に帰っていくのでした。

 

普段来館者の方々には見られないように、見られないようにと隠してきたウラの顔を、恥ずかしながらさらけ出した今回のナイトミュージアムは、いわゆる「保存環境」に関する内容がメインになりました。もしも今後、保存のお話しをする機会がまた設けられましたならば、次回は「資料保存のイロハのロ」としてまた少し違った切り口にお話しができればと思います。
ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。

そして今回惜しくもご参加いただけなかった皆様、ご安心ください。
なんとこの「れきぶんナイトミュージアム」、年4回の企画でございます。

次回は夏!8月11日に開催します「山のお話し&夜の博物館探検」です。
めでたく制定された「山の日」を記念して、子どもたち主な対象として山にまつわる色々なお話しをさせていただきます。
秋には10月4日の十五夜の夜に「お月見文化を考える」
冬には当時を目前に控えた12月15日に「師走の年中行事エトセトラ」を開催予定です。
しかも、夏以外の3回は事前申し込み不要ですので、どうぞ気が向き次第フラっとお立ち寄りくださいませ!

ウラもオモテも含めて、今後とももりおか歴史文化館をどうぞよろしくお願いいたします。

 

担当学芸員:福島茜