節分も遥か昔のこと。
立春が過ぎたということは、今はもうすっかり春ですよね。

…などということもなく、まだまだ全然寒い今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
テーマ展「伝家の宝刀」は見てくださったでしょうか?
まだの方、見てください。どうかお願いします。

 

さて、今回の「ジョウセツ展の小窓」でご紹介しますのは、全部で6部屋ある当館の常設展示室のうちの第1室、その中でも入って最初に展示している資料です。1発目にご覧いただくわけですから、「もりおか歴史文化館はこんなものを展示しているところですよ」ということをお伝えする、名刺代わりとも言えるポジションになります。

 

 

それがこちら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やぁだぁー かーわーいーいー

 

伝 南部利敬(なんぶとしたか)筆「群鶏図」(ぐんけいず)です。

大小さまざまなニワトリが全部で25羽。可愛いらしい表情でわちゃっと群れています。
あまりにもかわいくて思わず昔のギャルみたいになっちゃいますね。真ん中ではなく端に固まっているのもかわいいポイントではないでしょうか。

作者である南部利敬、実はプロの絵師ではなく殿さまです。かたい感じで書けば、「第11代盛岡藩主南部利敬」となります。
天明2(1782)年、第10代盛岡藩主南部利正(としまさ)の子として生まれた利敬は、父の死によってわずか3歳で家督を継ぎ、藩主となりました。隣の弘前藩とともに、幕府の命令に従って蝦夷地(北海道)の警備のために軍を派遣し、その功績を認められて盛岡藩が10万石から20万石に加増されたのはこの利敬の頃です。そんなわけで「利敬=蝦夷地警備の人」のイメージが強いですが、一方で芸術文化、芸能の奨励にも力を入れた殿さまでした。例えば、昔清水町のあたりにあった「多賀神社」に奉納されていた「多賀神楽」。その地元の神楽をもともと舞っていた人たちを江戸に派遣し、江戸で最先端の神楽を学ばせたのも利敬。市内各所にある伝統さんさ踊りのひとつを制定し、地元の人にその踊りを守り伝えるようにと巻物を授けたのも利敬。
あれも利敬、これも利敬なのです。あくまでも「と、言われている」な話も多いのは事実ですが、それだけ文化芸能に関心の高い人であったのでしょう。

そんな利敬の作品であるこの「群鶏図」。
昔の絵と言えば掛軸!と、思われがちですが、別にすべての絵を掛軸に仕立てていたわけではありません。現代のイメージでいえば、よく描けたものや売り物、人にあげる物を額に入れるようなイメージですから、練習や下書き、なんとなく描いてみたものは掛軸になっていないのです。
この作品も、ペラっと一枚であるだけで、とくに何の手も加えられていません。「殿さまが描いたのに?」「殿さまの扱い雑じゃない?」と思ってしまいそうですよね。
この作品、実は利敬が描いた他の絵や書と一緒に、小さな木箱に入れてあったもの。それらの作品はどれもこれも、「よし!完成!掛軸にせよ!」という雰囲気のない、さらっと描いて「ハイ、次」「こんな感じ、かな…?」的な描き方なのです。むしろ落書きに近いようなもの(ふんどし姿の人が柱の穴を通り抜けようとしている絵とか)すらあります。おそらくですが、これらの作品群は利敬が絵の練習か下描きとして描いたものなのでしょう。それを、代々の家臣たちが大事にしまっておいたのです。扱いが雑どころか、下描きまで処分せずにとっておく姿勢は、まるで実家のご両親。
さらに、単に優しいだけでなく、美術史的に考えても実は下描きや練習はとても貴重な資料なのです。大切に取っておいてくれた人がいたからこそ、今私たちが見ることができるわけです。ありがたいです。

 

いやはや、良い話ですね。
自分の立場に置き換えたら、昔の落書きをいつまでもとっておく実家も、勝手に展示する未来人も迷惑以外の何ものでもありませんが、良い話です。

 

 

 

それでは最後に、筆者の推しニワトリをご紹介させていただきます。

エントリー№1
「修学旅行の引率のイケメン先生と、そのファンの生徒×2」
(※小さい方が先生に初恋中。後ろは若干ヤンキー気味の親友。)
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エントリー№2
「すごい丸い」
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エントリー№3
「すごいつぶらな瞳」
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エントリー№4
「ヤバイ目つきで自分のつま先をつつく」※本当は餌をついばんでいる
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以上です。今回も最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
南部利敬筆「群鶏図」は3月20日(月)まで展示予定です。
皆さまも展示室で「やぁーだぁー かーわーいーいー」と小声で言ってみませんか?(※展示室で叫んではいけません。ご理解ご協力をお願いいたします。)

ご来館お待ちしております。

 

担当学芸員:福島茜